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滅菌装置って?

 

 感染症という問題は昔から注視されていますが、今も無くなることはありません。
数年間前には手術器具を介したプリオン病の2次感染が話題となったり、昨年は都内の眼科で滅菌装置が故障して感染症を引き起こしたりしています。
しかし、多くの病院でその原因菌への関心や身の回りの消毒には真剣に取り組んでおられますが、滅菌についてはいかがでしょう。小さな病院でもオートクレーブの1台くらいは設置されていると思いますし、大きな病院になれば数台、数種類の滅菌装置があると思います。皆さんの院内にどんな滅菌装置が稼動しているか把握していますか?誰が取り扱い責任者で、管理は誰が行っていますか?点検は臨床工学技士が関わっていますか?

ということで、今回は院内にある滅菌装置について少し考えてみましょう。
現在、企業などでは放射線滅菌などの大掛かりな装置もありますが、病院の医療用滅菌装置としての主流を努めているのがオートクレーブとEOG(エチレンオキシドガス)滅菌器です。この滅菌方法にはそれぞれ以下のような特徴があります。


オートクレーブ
  熱により蛋白を変性させて殺滅する方法
  重要な滅菌条件は「温度」「圧力(飽和蒸気)」「時間」
  滅菌方法の中で最も経済性・信頼性が高い
  蒸気を使用するので副作用が少ない
  高温で使用するため、火傷の危険性がある
  プラスチックなど温度に弱いものや圧力をかけられないものには使用できない

EOG(エチレンオキシドガス)
  湿度によりEOの活性を促進し、タンパク質などの成分に反応してDNAを破壊
  する
  重要な滅菌条件は「温度」「湿度」「濃度」「時間」
  低い温度、湿度で滅菌可能
  材質適合性が高く、ほぼどのような材質にも変成作用をもたらさない
  人体に対して毒性のあるガスを使用するため、ガス抜きに長時間のエアレーショ
  ンが必要
  大阪府では排ガス処理装置の設置など行政によっては厳しい規制が定められてい
  る

院内ではこれらの方法の機械を大小組み合わせて購入したり、温度・時間を変えたりして運用していることが多いようです。


しかし、現在EOG滅菌は海外で徐々に無くなりつつあります。この原因はその毒性にあり、癌をはじめ胎児の奇形や健康障害、地球温暖化などを生じることが判明しているからです。
さらに、国内では重宝に使用されているハイスピードオートクレーブも、その時間の短さから2次感染予防のため海外では使用が減ってきているようです。

そこで、地球や人間にやさしい短時間滅菌として現在注目されているのが低温プラズマ滅菌(通称ステラッド)とホルマリン滅菌です。
この低温プラズマ滅菌は過酸化水素を使用したもので滅菌終了後は水と酸素に分解されるため無公害で低温(約45℃)のため火傷の危険性もありません。しかも、排気などの配管を必要とせずに電源のみで動作します。しかし、紙やガーゼなど染み込む素材には不適当で滅菌できません。

そしてホルマリン滅菌ですが、今までホルマリンは消毒として認知されてきましたが、これを滅菌装置にしたもので今年3月に滅菌器としての承認が降りたばかりですが、その浸透性はEOG滅菌に劣ることはありません。

国内でも施設経費の増加やEOGでの健康障害などの問題から、滅菌作業のアウトソーシングを行っている病院も増えてきましたが、意外と経費が掛かかったり小回りが効かない事から見直されているところもあるようです。
  
消毒のことは解っていても、術後の機材洗浄や滅菌についてはどうでしたでしょう。中央材料室に出して終わりになっていませんか。
滅菌装置はクラスUの特定保守に指定されています。残念ながら滅菌装置に関わっている臨床工学士は少ないのが現状ではないか思いますが、滅菌技士という認定資格もあります。医療と施設管理の両方に関わりを持つ臨床工学士として、今一度院内の滅菌装置を見直してみてはいかがでしょうか。