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パンデミック

 

 パンデミックによる人工呼吸器不足を考慮して、新型インフルエンザ患者を受け入れる医療機関の人工呼吸器整備のための予算が平成20年度補正予算で執行されます。
 大正7年にはスペイン風邪の際、世界で6億人の罹患者と3000万人の死亡者、わが国でも39万人の死亡者が生じたと言われています。また、昭和32年のアジアインフルエンザ、昭和43年の香港インフルエンザでも世界で約100万人の死亡者が記録されています。
 スペイン・アジア・香港インフルエンザの流行時と比較すると医療の質・量共に大幅に改善され、衛生面も向上しています。一方、人口の増加、高齢社会、基礎疾患を有する方の増加、都市への人口の集中、交通網の飛躍的な発達など、社会生活環境も大きな変化を遂げています。これに伴い、一旦出現した新型インフルエンザはより短期に波及する可能性があり、感染の拡大により社会の混乱が予想されます。

現在、WHOによるパンデミックインフルエンザ警告フェーズは「3」

 パンデミックの対策は、毎年流行する季節性のインフルエンザ対策の延長線上にあります。季節性のインフルエンザに対する最大の防衛策はワクチンです。しかしながら、パンデミックが発生した際には、現在のインフルエンザワクチンの効果はほとんど期待できません。もちろん、学問的にはもし、効果があるかもしれないとの意見もありますが、確定されたものではありません。国レベルの対策として、学校を閉鎖したり、公共施設や映画館などを閉鎖したり、あるいは集会を禁止したりということも考えられていますが、職場や家庭においても接触機会を減らすことは重要なことであり、パンデミックになった際に可能な限り感染している(かもしれない)ヒトとの接触を減らすために、どのような生活パターンとするか、あるいは外出機会を減らすために生活必需品を備蓄しておくなどを考えておくことが勧められます。

 また、パンデミックを拡大させないためにもっとも重要なことが、感染者自身が広げないように最大限の注意を払うことであり、インフルエンザに罹患し、咳嗽などの症状のある方は特に、周囲への感染拡大を防止する意味から、咳やくしゃみをする際にはティッシュで口元を覆うか、マスクを着用してもらうということです。これは現在の季節性のインフルエンザでも有効ですし、インフルエンザに限らず、あらゆる呼吸器感染の拡大防止の基本です。

 新型インフルエンザに罹患した場合でも季節性のインフルエンザと同様、細菌の二次感染による肺炎などの合併症により重症化することが考えられますので、高齢者、免疫が低下した状態にある方など、特定のグループにおける細菌による二次感染予防については、現在国内で使われている肺炎球菌ワクチンの効果がある程度期待できると考えられています。

 もちろん、室温、湿度の管理、バランスのよい栄養の摂取、手洗いとうがいなど、一般的な個人衛生と体調の管理も個人で行える対策です。

迫りつつあるパンデミックの脅威への対策は十分でしょうか?

参照HP;国立感染症研究所 感染症情報センター