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心拍数

 

 ペースメーカーチェックを行っていて、たまにいるのが「ちょっと体の調子がいまいちなので、心拍数を上げて欲しい」といった要求。

 DDDの患者ではまず居ないが、VVIの患者さんなんかでたまに見かけます。たしかに心拍出量=一回拍出量×心拍数なので、理論上は設定回数を上げて心拍数が増えれば心拍出量も上がるように思えます。
 でもね、ちょっと待ってください。それはあくまでも一回拍出量が同じ場合の話です。もちろん、最低レートが50ppmの人で常にペーシングリズムの人であれば60ppmに上げてやれば調子は良くなるかもしれません。でも、こういったことをいう人って大概最低レートが70ppmくらいの人なんです。それを80ppmに上げちゃうと、寝てるときにもバンバン動いちゃうし、心機能自体不安を抱えてたりすると一回拍出量も落ちる可能性があります。

 例えていうなら、送気球を手で握って送る場合、ある程度の速さまではきちんと一回で沢山押し込む事が出来ますが、あまりにも速過ぎると少ししか押せなくなってきて、しかも疲労も早い、といった事に似ているでしょうか。
 更には、心臓が動く際には心臓自体でもエネルギーを消費しますので、心臓が早く動くほど心臓での消費量も増えるために効率が悪くなってきます。

 じゃあ、最適な心拍数はどのくらい?という話になるとそれぞれに違ってきますので、大変難しい話になりますが、もしも、限界ギリギリまでに上げるのであれば超音波検査などでそれぞれの心拍数ごとの動きをモニターするとかの処置は必要だと思います。

 でも、哺乳類の一生の心拍数は20〜25億回と決まっている、といった話もありますし、心室ペーシングが多くなると心不全の発症率が高まる、といった研究もありますので、やはりペーシングによる心拍数は極力少なくしてやりたいものですね。