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12月号
 
 

人間万事塞翁が馬

私が高校の時に覚えた名言のひとつです。心の奥に響きました。

 昔、中国の北方に住む異民族を総称して胡と言い、漢民族から大変恐れられていた。これはその胡の地との国境に位置する城塞のあたりの話である。
 この地に占術などに通ずる老翁が住んでいたが、ある時いわれもなく翁の馬が胡の地に逃げてしまった。南船・北馬と言われる北の大地で馬を失ったことを、近所の人が気の毒がって慰めに来てくれた。すると翁は一向気にとめる様子もなく言った、 
「これがどうして幸福に転じないことがありましょうぞ。」
 果たして数カ月もたつと、その馬はどうしたわけか胡の良馬を引き連れて帰って来た。人々はさっそくお祝いの言葉を言いに来たが、
 「これがどうして禍に転じ得ないと申せますか。」
 と、少しもうれしそうでなかった。
 翁の家は良馬に富むようになったが、やがて乗馬の好きな息子が、馬から乗り落ちて股の骨を折ってしまった。ビッコになった息子をかわいそうに思った村人は、また翁を慰めにやって来た。
 「いやいや、何でこれが幸福にならないことがありましょうぞ。」
 翁は依然として平気のへいざであった。
 その後一年たった頃、胡人が城塞になだれ込んで来た。村の若者という若者は弓を引いて戦い、十人の中で九人までも戦死した。しかし翁の子は不具者であったため戦争に駆り出されず、父子ともに無事であったという。 

「悪いことがあってもくじけるな! でも、良いことがあったからといって浮かれるな!」